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朝倉山椒の“脂質と糖質の吸収抑制効果”とは
兵庫大学(加古川市)より、兵庫県産 朝倉山椒を使った2つの研究について、興味深い研究成果が学会で発表されました。
1. 兵庫県産朝倉山椒の膵(すい)リパーゼ阻害活性
学会名:日本調理科学会2023年度大会
発表者:山崎一諒、栗山磯子、茨木信雄(兵庫大学、朝倉山椒継承会)
【背景】
脂質は嗜好性に大きく寄与する一方、その過剰摂取は肥満や動脈硬化症のリスク要因となります。食品中の主な脂質であるトリグリセリドは、膵リパーゼ(消化酵素)によって加水分解された後、小腸上皮細胞より吸収さます。そのため、膵リパーゼの阻害は脂質の吸収量を減少させることで肥満等の予防・改善につながります。
【目的】
山椒は早春の木の芽、初夏の青い実、秋の赤い実、さらに木の皮や蕾が食されており、和食文化において季節感を印象づける重要な食材です。本研究では兵庫県産の朝倉山椒に着目し、その付加価値を検討するため、実・蕾・花および未利用部位である軸の膵リパーゼに対する影響を評価しました。
【実験内容】
山椒試料を実験内容に応じて調製し、実山椒を精製。 調理し食される事を考慮し、水抽出と加温を行ったうえで、膵リパーゼ阻害活性試験を行いました。
【結果】※一部抜粋
●山椒の各部位から膵リパーゼ阻害活性がみられました。(右記図1)
●比較的高極性な化合物の活性への寄与が考えられたことから、調理や加工品への応用を検討するため、水抽出および70℃加温による影響を評価しました。その結果、いずれの場合も活性は保持されていました。
●PDA分析から315nm付近に吸収極大をもつ化合物、あるいはペプチド等の寄与が考えられました。
朝倉山椒そのものの嗜好性に加えて新たな付加価値、及び未利用部位の有効活用につながる一端の知見を見出しました。
現在は質量分析、核磁気共鳴分析により活性成分を明らかにするとともに、調理や加工品への応用を検討しています。
2. 兵庫県産朝倉山椒の糖質分解酵素阻害活性
学会名:第77回 日本栄養・食糧学会大会
発表者:栗山磯子、茨木信雄、山崎一諒(兵庫大学、朝倉山椒継承会)
【背景】
糖尿病は慢性的な高血糖状態により引き起こされる深刻な疾患の1つです。食事に含まれるでんぷんなどの糖質は、そのままのかたちでは吸収されず、唾液や膵液に含まれるα-アミラーゼによって、二糖類や三糖類にまで分解されます。
次いでマルターゼやスクラーゼなどのα-グルコシダーゼによって単糖類へ分解されることで、体内に吸収されます。これらの糖質分解酵素の阻害は摂取した糖質の吸収を遅らせ、食後血糖値の急激な上昇を抑制し、糖尿病の予防や改善につなります。
【目的】
本研究では兵庫県養父市で栽培された朝倉山椒に着目して、その実および非可食部である軸の各種糖質分解酵素に対する阻害活性を評価しました。
【実験内容】
山椒試料を実験内容に応じて調製し、得られた試料溶液を用いてα-アミラーゼとα-グルコシダーゼの阻害活性試験を行いました。
【結果】※一部抜粋
図1)実、軸いずれの抽出物もα-アミラーゼ阻害活性はみられませんでした。
図2)実抽出物において1、10mg/mlではそれぞれ13.2%、61.3%、
軸抽出物ではそれぞれ21.4%、79.7%のマルターゼ阻害活性を示しました。
図3)実抽出物において1、10mg/mlではそれぞれ8.9%、49.1%、
軸抽出物ではそれぞれ17.2%、61.3%のスクラーゼ阻害活性を示しました。
図4)実抽出物の酢酸エチル画分10mg/ml、水画分10mg/mlは、それぞれ
63.3%、49.5%のマルターゼ阻害活性を示しました。
朝倉山椒の実、軸ともにマルターゼ、スクラーゼに対する阻害活性がみられました。特にマルターゼに対する阻害活性が高く、実山椒についてはその嗜好性に加えて健康効果を有する可能性が示唆されました。
また山椒の軸は製品にする際に取り除かれていますが、実山椒と同様に阻害活性を示したことから、今後 非可食部の有効利用が考えられます。
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